SSブログ

『想像ラジオ』 [本]

想像ラジオ

想像ラジオ

  • 作者: いとう せいこう
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/03/02
  • メディア: 単行本
 今、この瞬間に命が絶たれるとしたら・・・。大切な人に、何も残す時間はない。何も伝えられない。その想いは、いったいどこへ行くのでしょう。あなたは想像できますか?
 この本(ラジオ)のメインパーソナリティ、DJアークは、自分が置かれた状況を把握しないまま、“想像ラジオ”を始めます。それは、誰にでも、聴こえるかもしれない、聴こえないかもしれない、想像で繋がるラジオ。リスナーから次々に届けられるメッセージと、自分の中からわき上がってくる想いを通して、彼は次第に気づいていきます。自分が、誰に、何を伝えたかったのか。
 生きている私たちが、死んでいった人たちの声を聴くことはできません。でも、想像することはできます。作者は本書を執筆後の対談で、「想像すれば絶対に聴こえるはずだ、想像力まで押し潰されてしまったら俺達にはあと何が残るんだと思っていた。」と話しています。けれど、震災などで亡くなった人たちの想いを、他人の私たちが勝手に想像することが、正しいことなのか。その議論は、この本の第2章でもされています。
 確かに、勝手な想像は危険です。けれど、想像をやめてしまうのも、また危険な気がします。議論の中で、若者がバイト時代に親方から言われた「亡くなった人が無言であの世に行ったと思うなよ」という言葉が印象に残ります。想像すること、亡き人に想いを馳せることで、次に繋がっていく確かなものがあるのではないかと、この本をきっかけに考えるようになりました。議論の答えを出すのは、私たち、一人一人です。
 耳を澄ませて想像してみてください。あたなには何か聴こえてきますか・・・?

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。